「こんにちは、あの人が愛した周縁の街の朝焼け。」

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 待ち合わせは「ケヤキ」で、これは僕と君の暗黙の了解。 「ケヤキ」はコンビニの名前。 僕らの住む梅宮市月ヶ丘町二丁目の住宅街、その住宅街の高層マンションが立ち並ぶ一画にそのマンション群に埋もれるようにひっそりと佇む「ケヤキ」はいつ見ても窮屈そうで、そこが何かいい雰囲気。 朝7時、休日の朝は人があまりいない。 君はすでに「ケヤキ」の前で待っていた。 車止めの上に立って視線を虚空に彷徨わせている。 「おはよう」「待った?」「それほど」「なにか買う?」「なにも買わない」「そう」「そう」「行こうか」「行こうか」朝7時2分。  湖に行く最中、キンキンに冷えた梅宮線の車内から梅宮の見飽きた街並を眺めつつ君は呟く。 外はとても暑そうだと。 事実各駅に止まる度に開くドアの外からはむせ返すような外気が車内に入り込み、キンキンに冷えた車内を東南アジアの何処かの国に瞬時に変えてしまう。 ベトナムだ、きっとこのモアモア感はベトナムのそれに違いない。 ベトナムに行った事はないけれど、行かなくてもベトナムのことだからこんな暑さしているに違いなく僕は決してベトナム人にはなりたくないから、その外気を身体にまとわりつかせぬよう右に左に巧みに身体を揺らし続ける度に隣に座る君の柔らかな左肩に肘をぶつけ続けた。 「揺れるのをやめてほしい。君が揺れる度に私の身体が痛いから揺れるのをやめてほしい。」 普段そこまで意見を言わない君にそこまで言わせたんだから、相当なことをしたのだろうと思う。 「ごめん。」 素直に謝ったのによっぽど僕の身体の揺れを不審に思ったのか君が僕に詰め寄る。 僕の目を下から覗き込み、本当に君は藤村君なの?どこかで入れ替わったりしなかった? 例えばベトナム人とかに……。
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