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 梱包した箱を開ける作業に取り掛かろうとする横を、珍しく工場内での事務方トップである管理部長が通りがかった。  急に鈴木がそわそわしだした。それが所定の作業であるかのように、結束バンドをはさみでちょん切って、勢いよく箱のふたを開けた。  風待はマスクの下で小さく舌打ちした。  部長は人事権を持っている。風待もここに入る時、簡単ながらも工場長と部長の面接を受けた。  何も考えていなくてこの出来なさ加減ならいっそ清々しいのに、一丁前に評価を気にするところが気に入らない。  鈴木のやることなすこと、不思議なほどに何一つ好感が持てなかった。  すっと通り過ぎていくかと思いきや、部長は風待と鈴木の前で立ち止まった。 「ああ、風待君、鈴木君、仕事終わったら話があるから仕事終わったら事務室の方に一人ずつ来て。」 「はいっ」 「はぁ……」  鈴木の方は今日で研修が終わるということだから、ねぎらいとこれからの予定のことだろうが、風待の方は見当がつかなかった。それだけ言うと、部長は牛肉のラインの主任の方へ向かって歩いていった。  鈴木は手を止めて、風待を肘でつついた。 「なんだろうね、風待くんのは」  鈴木の目は好奇に光っている。  こういう嗅覚の鋭さを見せるところがまたうっとうしい。 「てめぇのしったこっちゃねぇよ」 「え、なに?」 「ああ、これこれだ。台乗っけて」 「はぁい」  部長の話が鈴木の失敗に関することなら、風待の知ったことではない。
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