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「ミエちゃんママさんから職場で働いているご主人に向けてメッセージ 『たっくん、いつもお仕事お疲れ様です。私ももうすぐ産休明け。また一緒に仕事頑張ろうね』 いいねぇ~、うらやましいっ。リクエストは二人の出会いの曲、JUN SKY WALKER(S)で『歩いていこう』」  ありがたいことに、ラジオから流れるのはからっとした、軽快な曲だった。 「おい、たっくんよ」  どこからか、だみ声とくすくす笑いが上がった。  無個性な白い制服の中で、一人照れくさそうに、しかし嬉しそうに目じりを下げてうつむく姿があった。  そういえば、この男、下の名前は達也とかいったか。  皆決して手を止めたりはしないが、マスクの上の目元は笑っていた。  風待は個性を信じない。だが、こういう瞬間を嫌悪しているわけではない。  マスクをかけた時に感じる薄暗がりにうずくまっているような安心感とは全く別種の、明るさと暖かさを感じることもできる。  だが、その光の中に入っていくことはできない。光に照らし出される個性を嫌悪しているのだから。 マスクの下で微笑みを浮かべているであろう男たちに取り囲まれて、風待は無表情に体のエンジンの回転数を上げていくことだけに集中した。
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