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昼休憩は前半はせわしない。
なるべく体を横にして休めるために、素早く昼飯をかっこもうとする男が多いからだ。
その点女はおしゃべりに花を咲かすことにエネルギーを費やそうとする。
男の方が力仕事が多いせいもあるかもしれない。
牛肉のラインはその重さのためにほぼ男しかない。
女たちは加工品のラインや、そのままスーパーの店頭にならべられる肉のパック詰めなどが主な作業だ。
風待はどちらにも属さず、一人ゆっくりと手製の弁当を食べることにしている。
今日は白い飯と、隣にある同じ系列の鶏肉工場から安く譲ってもらった冷凍肉をどうにかこうにか解凍して醤油で焼いた、自分でもなんだかわからないモノだ。
「まっじぃ……」
我ながら思わず顔をしかめる味だ。
電子レンジが欲しいところだが、金が惜しい。目標額までもう少しなのだ。
金がなければ何も始まらないことは骨身にしみている。
金が貯まれば、今持っている数少ない家電の冷蔵庫と炊飯器だってうっぱらってかまわない。
「やっぱり、今日はから揚げ無理かも」
お茶を汲む音、軽やかな笑い声、六畳敷きの小上がりから聞こえる気持ちのよさそうな寝息の間をぬって、ぽそりと女の声が聞こえてきた。
若い男女が三人ずつ、白いテーブルに差向いに座っている。
一人だけ妙につやつやした顔をした男を除いて、全員顔色がさえない。弁当の減り具合から食事も進んでいないようだ。
窓の外を見やると、どんよりとした灰色の雲が空を覆っていた。
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