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「あの、隊長。私も変なことをお聞きしますけど、最近、夢を見ませんでしたか? わ、私の」
アーゼントの息が一瞬止まったのをフランセスカは見逃さなかった。
「どこから、覚えてる? 」
アーゼントのその一言に、信じられない思いで視線を合わせたフランセスカは、夢とまったく同じ顔の作りをしている彼に度肝を抜かれた。まさか、あの夢は現実であったのかと心配になるくらいに。
妄想ではなかったのか、とフランセスカの顔を見たアーゼントは、夢の中の彼女と目の前の彼女が同じであることにおののいた。
お互いを探るように見て沈黙し、先に折れたのはフランセスカだった。強張った顔で真相を語り始める。
「正直に言います。あの、私……隊長に少しでも近づきたくて、でもそんな勇気が持てなくて、気休めにこ、恋まじないで、隊長の夢でも見られたらって」
眉唾ものの恋まじないに必死だったこと。
「そしたらある日、まるで現実の世界のような夢を見ました。私、それだけで舞い上がって、隊長に少しだけ、ふ、触れました! 」
偶然手に入れた怪しい夢見石を使った日、今までになく鮮明な夢を見て興奮し、大胆になったこと。
「その時から度々、同じような夢を見たんです。場所は隊長のお部屋みたいなところだったり、わたしの部屋だったり、任務先だったり」
ポツポツと語るフランセスカの説明に概ね納得した。アーゼントも変だとは思っていたのだ。悪い呪いにでもかかったのかと思うくらいには怪しんでいたのに、放置したのは心地よかったからで。だから白状することにした。
「夢とは言え、君に対して大変失礼なことを」
「えっ? そんな、夢の中のことは自分自身の願望なのではないですか? 」
「いや、実は君が今話してくれた内容の夢……自分も同じものを見たんだ」
「えっ? 」
「まぁ、なんだろう……夢の共有? 」
アーゼントの言葉に何かを思い出すように眉をひそめたフランセスカは、ハッとして己の唇を手で押さえた。
「それじゃ、わ、私に口付けたのは…… 」
「そ、それは知らない! 」
改めて自分のしたことを本人の口から告げられると、自分がとてつもない変態のようでアーゼントは咄嗟に否定してしまった。
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