プロローグ

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 リアムは表向きにはノアール公爵として城内を出入りしているが、その裏の顔は情報屋だ。彼の裏の顔を知っているのはごく僅かな人間だけであり、ジュリアンにも知らされていなかった。  また、リアムは公爵として舞踏会や紳士たちの集いである社交場に顔を出すこともなかったので、ジュリアンはリアムと全く面識がなかった。  それが、ジュリアンが城を散策中に秘密の扉を開けたことにより、そこで待ち合わせをしていたリアムに偶然出会ったのだった。  尊敬や愛情の眼差しでしか見つめられたことのなかったジュリアンにとって、意地悪を言ったり、卑しい目つきでジロジロと見つめてくるリアムは、苦手だと感じた。  しかもその場で強引に押し倒され、バックバージンまで奪われてしまったのだ。(ちなみに、ジュリアンはまだ童貞のままだ)  屈辱でしかない行為だったはずなのに、それ以来なぜかジュリアンはリアムのことが気になるようになり、初めての感情に不安と戸惑いを覚えた。  リアムはそれ以来、仕事の際にはジュリアンの元を訪れるようになった。やがて一緒の時間を過ごすうちに、次第に彼の隠された優しさや孤独に気づき、リアムに惹かれていくうちに、ジュリアンはそれが恋だと自覚した。  けれど、どんなに体を重ねても、リアムの心は見えない。ジュリアンはただリアムに弄ばれているだけと感じ、距離を置こうとした。  だが、その時に初めてリアムから想いを告げられ、ふたりはようやく心が通じ合った恋人同士となったのだった。  
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