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駅から近いビルの立ち並ぶビジネス街にやってきた。タクローにとって、そこはまぶしいばかりの場所だった。薄汚れた格好のタクローに対してスーツを着て道を急ぐビジネスマンは別の世界の人間のようだ。
ビジネス街の、似たような形の背の高いビルは道路に迫ってくるようで落ち着かない。
「ここよ」
右だ左だ、と指示するアイリに従って30分ほど歩いていくと、ある場所で立ち止まった。すぐわきを見上げると、大きなビルが建っている。数えてみると十階建てだ。隣接するビルとの間に十分な空間がとられ、その敷地内にはタイルがはめ込まれていた。正面のガラスの自動ドアの横には直立不動の警備員が、小汚い服のタクローを胡散臭げにチラ見している。
「このビルの写真を撮って」
液晶画面の中から、アイリはそう言うのだった。
「こんなものを撮るのか?」
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