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「…………」
その告白に、タクローは黙した。いったいなにがあって、アイリはこのカメラに入ってしまったのだろうと訝った。撮影したビルの規模から推測するに、比較的大きな企業に就職したのだろうと思えた。
「カメラの中ってのは、どんな状態なんだ?」
「まわりにはなにもないです。狭い空間のなかで身動きもとれないし」
「そりゃ窮屈でつらかろうな。腹がへったりしないのか?」
「それが全然。眠くもならないです。時間の感覚がないっていうか……」
「でも退屈だろうな……」
「普通に考えたらそうでしょうけど、その感覚もないんです」
そんな話をしながら、また40分ほど歩いた。
ビジネス街から住宅街へ。周囲はビルからマンション、そして戸建て住宅が立ち並ぶ地区へと入っていった。
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