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「アイリ──」
振り返ると、夕暮れの歩道に立っているのは若い男だった。その表情は喜びと危惧の混じった、だが心からホッとしたようである。
「心配でずっとあとをつけてきた。元に戻って本当によかった」
そう言ってアイリを抱きしめた。
「ああ、リョウスケ……」
アイリは男の名をよび、抱擁を交わす。
足元にはカメラが落ちていた。さっきまでアイリが閉じ込められていた、あのコンパクトカメラである。
リョウスケはそれを拾い上げる。液晶画面にはタクローが写っていた。なにが起こったのかわからず、画面の中で混乱した表情を浮かべていた。
「これはいったい……?」
「おまえはこのカメラに閉じ込められたんだよ」
リョウスケは、氷のような冷たい口調でそう言った。
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