奇妙なカメラ

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 写真はその一枚きりで、ほかには写真がなかった。まだ買ったばかりのようである。この女の子が持ち主なのだろうか? なかなか美人で、いい女だなぁ、などと下品な想像をしかけたとき、 「おねがい、助けて」  タクローはふいに聞こえてきた声に、ビビって周囲を見回した。こういう生き方をしていると警戒心が強くなってくるからだ。こんな金目のものを持っていたら、いつ襲われるかわかったものでない。  視線を走らせる小汚い町の通りには、しかしだれもいなかった。通り過ぎるクルマもなかった。  タクローは首をかしげ、 「気のせいか……?」  つぶやいた声が意外と大きかった。そういえば、最近だれとも話しておらず、最後に声をだしたのはいつだったか思い出せなかった。
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