奇妙なカメラ

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 タクローの寝場所だった。わずかに庇があり、ここなら一応、雨風もしのげた。  この場所に落ち着くようになって数週間になる。一つところにじっとできない性分で、ときどき寝場所を移動した。ホームレスにはよくあることだった。  広げた段ボールの上に座りこむタクローに向かって、アイリの口調は真剣だった。 「もしわたしをカメラの中から助け出してくれたら、なんでも言うことをきいてあげる」 「なんだと……?」  まるでアラジンと魔法のランプのようだ。でてきた魔神がどんな願い事でも叶えてくれる、昔話にありがちな、超都合のいいお話である。  タクローは苦笑する。二十一世紀にもなって、こんな話を信じるやつがいるものか──。 「なんでもって、魔法でも使えるっていうのか?」  タクローは相手を試すつもりで質問する。
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