奇妙なカメラ

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 するとアイリは言った。 「あなたのお嫁さんになってもいいわ」  画面の中から嫁が出てくる──。それって、なんのラノベだよ。タクローがもし若い男なら、そんな感想をもったことだろう。  あまりのことに、ぽかんとしていると、 「こんなところに閉じ込められているわたしを疑うの……?」  アイリは悲しそうな顔で、上目遣いでタクローを見返す。  もしそれが本当なら夢のようではあるけれど……と我に返ってそう思う。  もちろん、ホームレスであるタクローは結婚などしていない。結婚歴もなかった。  若い頃にはどこかに勤めていたこともあったが、いずれの職場も長続きせず、あちこちと転職を繰り返した挙句、日雇い労働者に落ち着いてしまっていた。  そんな生活だったから嫁を迎えるなど考えもしなかったし、結婚を前向きに考えてくれる女性にも巡りあわなかった。
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