月と妖精

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こどもたちがママに「おやすみなさい」のキスをしてもらってベッドに入る頃、妖精たちはひらひらと、夜空を飛び回ります。  妖精たちはみんな、腰にちいさな袋をさげています。  袋のなかには星の欠片が、たくさんはいっています。  妖精たちは飛び回りながら、子供たちの眠っている部屋の窓にむかって、いっかい、にかい、さんかいと振りまきました。  すると、どうでしょう。  スヤスヤと眠っているこどもたちが、くちびるをほころばせて、微笑んでいるではありませんか。  じつは、妖精たちが振り撒く星の欠片には、素敵な夢を見させてくれるちからがあったのです。  こどもたちは夢の中でお菓子のおうちをたべたり、きれいな花がさくお庭であそんだり、お姫様になってダンスをしたり、魔法使いになって、せかいじゅうを旅したりするのです。  しかし、星の欠片は夜明けになると、ちからをうしなってしまいます。  だから妖精たちは夜が明けるまで、いっしょうけんめいに星の欠片を振り撒くのです。  ある夜、妖精のひとりが星の欠片を集めた袋が空っぽになってしまったので、他の妖精たちにわけてもらおうと、仲間を探していました。ちょっとおっちょこちょいで、あわてんぼうのわすれんぼうなその妖精は、またやってしまったと思って、がっくり肩を落としていました。  こどもたちが楽しい夢を見ますようにと、妖精はついつい多めに、星の欠片を振り撒いてしまうのです。  みんな、どこへいってしまったのかしら。  キョロキョロと見回してはみたものの、いっこうに見つかりません。  困ったわ。夜が明けてしまう。  泣きそうになっていた妖精は、ふと、ある家の窓に目を向けました。
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