0人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしてそんなに驚くんです? 心鏡を直すには心鏡に触らなければいけません、そうでしょう?」
「で、でも......!」
マミさんがためらうのも無理はない。心鏡の中身は究極的なプライベート空間だからだ。そこが全開になって閉じないからこその心鏡解放現象だ。自分でも見ることは叶わない、でも大事な部分。患者さんとしては、もうこれ以上他人に心鏡を見られたくないと言うのが正直なところだろう。
しかし、先生はそんな患者さんの心を無視して悪びれずに言う。診療所の診察室は密室だ。そして、マミさんは先生に助けを求めに来たのだ。先生の方針は絶対だ。
大昔、いろんなハラスメントが起きた構図を利用して先生はマミさんに迫った。ぼくは今までの先生の治療例を見ているから、心鏡を触らない治療の方法があることを知っているけど黙っている。
ぼくにとってこの診療所に関係している人以外は、あの屋敷の人と一緒だ。どんな目に合おうが、ぼくには関係ない。
マミさんは、たっぷり悩んだ後ーーだいたい十分くらいだろうか、その間先生はマミさんの前に座りつづけたーー、先生が心鏡に触ることを認めた。
「はい、ご協力ありがとうございます」
最初のコメントを投稿しよう!