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「あいつも......わたしを、トワ先生の病院に連れてきた友達も、悪いやつじゃないの。小さな頃はわたしをいじめっ子から守ってくれたし、今でもわたしの事を思ってしてくれているのは分かるわーーでも、やっぱりそっとして欲しい気持ちもあって」
「......」
ぼくは、なんて言えばいいのか分からなくなった。
ぼくは、記憶のあるうちでこの事務所に来る前は、ずっとあの屋敷か誰かの心鏡風景の中にいた。出会う人たちはどうでもいい人か悪い人かいい人かにきっぱり分類されて、いい人であり悪い人である、というのはよく分からなかったから。でも、そんな人の事を語る人達はみんな、大事な宝物を見せているような顔つきになるからいつかはぼくにもそう語れる人が出来たらいいと思う。
考えていたら、マミさんはやっぱり気になるように心鏡の方を見やった。
「......ねぇ、心鏡の中っていったいどうなっているの? ここには、本当のわたしがいたりするのかしら」
「......心鏡の中には『本当の自分』なんていませんよ。心鏡風景の中には、イドとか呼ばれる自分に近い他人しかいません」
「でも、どうしてイドが本当の自分じゃないって、言えるの?」
マミさんの質問に、ぼくはカリア先生の言葉を思い出しながら答える。
「イドって言うのは、フロイトが」
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