愚鈍な王

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「全く!父は何故私を裏切ったのだ?この優秀な息子を!」王は歩きながらも理由が分からなかった。王は今まで王族としての暮らししか、してこなかったからだ。故に、自分を愚鈍とは思わなかったのだ。王は疑問を抱きつつも、歩き続けた。しばらくすると目の前からゆらりゆらりと彷徨う者が歩いてきた。王は気になって「どうしたのだ?この地をなぜ彷徨う?」と声をかけた。この彷徨う者は「...飢えたのだ。飢えたのだからさ迷うのだ」と深刻な口調で答えた。王は疑問に思い「何故飢えたのだ。飢えるような国ではなかろう?」と聞くと「愚鈍な王だ。愚鈍な王がいるからこそ飢えたのだ」と彷徨うものは先ほどより、はっきりした声で答えた。王はこの言葉に驚いた。自分が愚鈍と言うのは民が、父が自分の優秀さを理解出来ないだけだと思っていた。飢えなど、無いと思った。しかし、今実際に飢えてる者がいるのだ。食えず、このような辺境を彷徨う者がいたのだ。王は「ならば私についてこい。どうせ飢えて死ぬのなら、私と共に死のうじゃないか」と力強く言った。王は愚鈍だったが根にあるのは王族としての魂である。飢えてる民を放っては置けなかった。もっとも、かの国の王であった時、民には目を向けようともしなかったが。彷徨う者は驚きながらも「...いいだろう。どうせ死ぬなら人の横が良い。お前の名前は?」と落ち着いて言った。王の言葉に誠実さを感じたが故である。しかし、王は 迷った。自分の名前は知られているからだ。王は少し頭を捻って「あのときの裏切られた自分...いや、違う!自分ではなく王だな。うむ。奴からの脱却を目指し...変革...革命!そうだ。私はカクメイだ。カクメイという名だ。」王は咄嗟に、自分をカクメイと名乗った。「...カクメイ?ヘンテコな名前だな。私はウォーカー。よろしく頼む。カクメイ」こうして、二人は仲間となった。そして今度は二人で道々を彷徨うのだった。
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