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歩いて歩いて、ようやく僕らはそこにたどり着いた。
「このハシゴを登れば着くよ」
入り口の時みたく、目の前にハシゴが降りている。上から外の光が射し込んでいて、ハシゴの錆までもよく見えた。僕は先に行って、下からちゃんとアスカさんがついてきているか確認しながら、ゆっくりとそれを登っていった。
光に向かって真っ直ぐ登っていった僕らは、ようやくそこにたどり着いた。埃っぽくて汚れた風……だけども、檻の中では見られない「夕陽」というのは、やっぱり何度見ても綺麗だった。檻の中では全部地下にあるので見ることもなくなった電線、電柱なんてのもある。
「見なよ」
出口のマンホールから這い上がって僕はアスカさんに言った。空の赤い太陽を指差して、言った。アスカさんは、何も言わずにその光を見つめている。
僕の予想では、ここは「大通り」だった場所だ。
周りを見れば、ボロボロで窓ガラスの割れたコンクリート製のビルが立ち並んでいて、そのうちのいくつかは倒壊してしまっている有様だ。道路標識なんかもねじ曲がってしまっている。僕らはそんな大通りを歩き出した。
「ここが檻の外なんだね」
アスカさんが言った。僕は「うん」と言う。
「……お気に召さなかった?」
「ううん、とっても楽しい」
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