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アスカさんは表情が変わらないので、あんまり本心が読めない。だけども、僕は彼女の言葉だけは信じてあげないと、と思った。
僕は、いつもの場所にたどり着いた。
それは、この大通りの一角……壊れたビルにもたれかかるようにして鎮座している。
「わぁ……」
真っ白な鎧を着た巨人だ。その鎧は傷や汚れでボロボロになっているけど、鎧についた宝石みたいな装飾だとかを見れば、きっと昔はさぞ美しかったんだろうと思う。……よく見ればその鎧の隙間から覗く体は、鋼鉄でできているようだ。
「……こいつロボットなんだよ」
僕は巨人に歩み寄る。アスカさんが僕に訊く。
「ロボット?」
「そう。……昔ここでは大きな戦争があったんだと思う。ほら、弾丸の跡があるだろ。……その時、きっとこいつも戦ったんだよ。兵器ってやつなんだ、こいつは」
アスカさんは、「悲しいね」なんて言った。でも僕は、彼女に笑みを向けると、巨人の足元にあるそれを指差した。
……小さな、黄色い花。それは、その辺り一帯にいくつも咲いていた。
僕は、その花に近寄った。そしてポーチから水の入ったペットボトルを取り出して、その水を花たちに与えてやった。
「……環境のせいで、繁殖する力が弱くなってしまったんだと思う。だけど……空気は悪くなったかもしれないけど、まだここの土は死んでないと思うんだ」
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