「エスケイパー」

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 見えるのは真っ赤な太陽の煌めき。電線や電柱。朽ちた建物ばかりだ。 「……帰ろう」 僕は彼女に、手を差し伸べて言った。すると彼女は僕の方を見る。彼女は微笑んでいたけども、心なしか、悲しげな顔に見えた。  僕らは、通ってきた道を逆走するようにして、あのマンホールへと向かった。  僕らは二人、ハシゴを降りる。錆びたハシゴを降りていく。  ハシゴを降りたら、懐中電灯を使ってまた地下通路の暗闇を照らした。……アスカさんの顔色が悪い。僕は、アスカさんに、懐中電灯を差し出して言った。 「……アスカさん。僕がおぶるから、その代わり、懐中電灯で道を照らすのをやってくれる?」 アスカさんは、少し考えて言った。 「……うん」 僕は、懐中電灯をアスカさんに渡して、彼女を背中におぶる。リュックを背負ってるのに、びっくりするくらい軽かった。もしかしたらあの中身は、全部お菓子だったのかもしれないな。 「大丈夫?」 アスカさんが僕に訊く。僕は笑って答えた。 「平気さ。アンドロイドだからね」 僕はアスカさんをおぶって、地下通路を進んでいった。彼女の持った懐中電灯が、道を照らす。  ふいに、アスカさんの声がする。 「ねぇイルカくん」 「うん?」 なんとなくだけど、後ろから聞こえるその声はいつもより真剣な気がした。     
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