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アスカさんは、「へーき」と言うと、僕の横を通り過ぎて、僕の前に来た。そして懐中電灯を進む方向にもう一度向けて、歩き始めた。
「行こ。いいでしょ?」
僕は小さく「うん」と言って頷く。そして、アスカさんの後ろを真っ直ぐついていく。
僕はその日、この地下通路を出るまで、アスカさんの顔を見ることはなかった。ただ……アスカさんの足どりがなんだか軽くて、彼女の長い髪が、懐中電灯の薄明かりの中でゆらゆらしていたのを、僕は覚えている。
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