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それは学校のすぐ近くにある。学校の南門を出てすぐの住宅街にある、赤い屋根の民家と、「ハマダ雑貨店」という古い看板を掲げた家の間……そこにある狭い路地。そのちょうど真ん中あたりの地面に、四角いマンホールがある。そのマンホールを開けると下へと続くハシゴがあり、それは下水道ではなく、何もなく真っ暗な狭い地下通路に通じているのである。
この場所は、外の世界にかなり近い……つまりは僕らの街の端っこのほうにある場所だ。あの地下通路は、檻を下から潜るようにして、外の世界に通じている抜け道、というわけである。
僕はその日も、そのマンホールの前に来ていた。……僕は人間と違って心臓というものがないけど、胸が高鳴るという感覚は、何となくわかる。まさにその時、僕の胸は大いに高鳴っていた。僕は心踊る気分で、マンホールの蓋を持ち上げようとした。しかし……。
「ねぇ、イルカくん」
その時、ふいに女の子の声が聞こえた。ついにバレたか、と思い、僕は後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、同じクラスのアスカさんだった。
アスカさんは、とても可愛くて愛想の良い、クラスの人気者だ。長く綺麗な髪やその顔立ちは、まるで「お人形さん」のようだと言われ、みんなが憧れている。そして、彼女本人はあまり口に出さないのだが、どうやら家はお金持ちらしい。親が厳しく、色んな習い事をさせられているようである。
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