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「わたし塾も家も嫌いだから、連れてって、イルカくん」
……僕はしばらく黙った。そしてそんな僕に、彼女は続けてこう言った。
「イルカくん、結構前からここ出入りしてるでしょ。わたしの予想では、多分そこから檻の外に行けると思うの。そうでしょ? 邪魔にならないようにするから、連れてってよ。いいでしょ」
僕は、つい、首を縦に振ってしまった。
そういうわけで、僕はアスカさんと一緒にハシゴを降りた。アスカさんはリュックを背負ってたけど、小さめだったのでつっかえることはなかった。
降りた先は真っ暗闇だ。僕は腰につけたポーチから懐中電灯を取り出して、そのスイッチを押した。懐中電灯の光に照らされて、どこまでも奥に続く狭い通路が見えた。床も壁も天井も、無機質なコンクリート製だ。
「ね、もし懐中電灯の電池が切れたら、どうする?」
「一本道だから、壁伝いに行けば戻れるよ」
僕たちは、その通路を歩き出した。
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