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僕が先を歩いて、アスカさんが後ろから続く。音がよく響くから、二人分の足音がしっかり聞こえる。たまに僕が後ろのアスカさんのほうを振り向くと、僕と目が合ったアスカさんはにっこりと笑ってみせる。……歩いている間あまり会話することは無かった。ただそういう、僕が振り向いて、目が合って、アスカさんが笑って、僕はまた前を向く、といった動作ばかりを何度もした。
進んでいくと、この通路の「最難関」に僕らは突入した。通路が下り坂になったり、上り坂になったりを繰り返し始める地点だ。地下通路は全体で見ても結構な長さがあり、この最難関地点はそのちょうど真ん中くらいのところにある。
「坂だね」
「うん」
僕らは坂道を上下して進んでいく。アンドロイドの僕は、あんまり疲れるということはないけれど、アスカさんは大丈夫だろうか。ここまで来るだけでも、女の子だったらすでに疲れてたっておかしくはない。
やっぱり、聞こえてくるアスカさんの足音のペースが、少しずつ落ちていっているようだった。僕はちょっと心配になって、歩く速度を遅くした。
「大丈夫?」
と僕は訊いた。するとアスカさんは、やっぱり笑顔を見せて、
「へーき」
と言う。どうやら少し呼吸も乱れているようなのに、彼女の表情は相変わらずだった。
歩き続けてようやく僕らは最難関の坂エリアを抜けた。
「休もうか、アスカさん」
「……うん、わかった」
僕らは壁にもたれかかるようにして座った。そして、僕は懐中電灯を上向きになるように地面に置いた。薄暗い光だけども、お互いの顔や荷物くらいは確認できる。
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