0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……僕は、自分の思った通りのところに行ける、自由な大人になりたいんだ。だから今のうちから、自由に檻の外にだって出てやって、僕は誰かにいいように使われてやったりはしないぞって、僕らを檻に押し込めた神様に見せつけてやってるんだよ」
僕が言うと、アスカさんはやっぱり「ふーん」とかって素っ気ない返事をする。表情は変えずに、だ。
アスカさんは、急にこんなことを言った。
「『お人形さん』って言うでしょ」
僕は、ぎくりとした。日頃僕が、彼女について思っていることを見透かされたと思って僕はぎくりとしたのであった。僕は「何が?」と彼女に訊く。
「私のこと。みんな、私のことそう言うでしょ」
みんな、か。僕はなぜだか、安心したような気がした。
アスカさんはやっぱり、貼り付けたような微笑みを浮かべている。それはいつも通りのことだったけど、でも、彼女が自分のことを自ら話したりするのは、予想外のことだった。
アスカさんは、言った。
「私って、三種類しか顔知らないんだ。だから、きっとみんな私のことお人形って言うのね」
そして僕は、その時にようやく、それが彼女なりの愚痴、悩みの暴露なのだと分かった。僕は今まで彼女について自分が思っていたことを省みて、何故だか情けなくなる。そして僕に普段は見せない姿を見せてくれている彼女に後ろめたさを感じながらも、僕は聞き手に専念することにした。僕はアスカさんに訊いた。
「ふぅん。三種類って、何と、何と、何?」
最初のコメントを投稿しよう!