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「誰も心配なんかしないよ」
卑屈になったわけでもなく、真実を言っただけのつもりだったのに、黒澤が眉尻を下げて悲しい顔をしたので、赤羽は慌てて付け足した。
「いつでもどこでも寝てるから、もう今さらみんな気にしないんだよ。先生だって、わかってるからわざわざ突っ込まないし。だから大丈夫」
それは、半分だけ本当のことだった。
でも、この場で詳細をふせたところで、クラスが別々とはいえ小さな学校だから、残りの半分もきっとそのうち黒澤の耳に入ってしまうと考えると、あまり意味はないな、と自分に呆れた。
それよりも、と続けかけて、赤羽は口をつぐんだ。
黒澤の紺色のソックスを覆った、透明なフットカバーを見つめた。
自分が気を病んだところでどうにもならないことは、例え黒澤が赤羽のことをどうにかしようとしたってどうにもならないことと同じだ。
安易なことは言わないようにしよう、と赤羽は決めた。
そんなこと、自分だって言われたくなかったから。
赤羽は、気分を変えるために横向きだった身体を仰向けにした。
すると、細い枝についたたくさんの緑の葉が視界いっぱいに広がり、その中に、ちらっと白いキャンパス地がのぞいた。
思わず跳ね起きて、赤羽はそれを指さして叫んだ。
「あった! スニーカー!」
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