8668人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
慣れているのか、ただごちそうしたいと思っているだけなのか。
考えは読めそうにない。
それでも自然と嫌な気分にはならなかった。
マスターがチョイスしたカクテルを掲げて乾杯。
たいした会話を交わすことなくそれぞれにグラスを傾ける。
いつもより少し多く飲んだせいかふわふわした気分で席を立った。
今日はこれで帰るつもりだった。
足元がおぼつかないわけではないけれど、ヒールを履いているせいで歩きにくい。
それを察知したように後ろを通り過ぎようとした私に、男はそっと手を指しだした。
「ありがとう。それと、ごちそうさまでした」
.
最初のコメントを投稿しよう!