第1章

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ひとりでひっそり通っていたバーで会った人が、まさか仕事を一緒にする相手になるとは思いもしなかった。 更に言えば、名刺に書かれた相手の会社名はひとつ下の階に位置していることにも気が付いてしまった。 今までなんの接点もないせいで気が付かなかったけれど、自分のテリトリーを脅かされる気がして気が気ではない。 とりあえず先週末、おかしな関係になっていなかったことが救いだ。 そんな過ちを犯したことはないけれど……。 新商品のCMについて打ち合わせしている間も、目が合うたびに気付かれるのではないかとドキドキしていた。 珍しく上の空だったかもしれない。 小田切たちは、今までのCMをしっかり研究しているらしく、いちから説明する手間は省けた。 ブランドイメージや新商品のコンセプトをうまく理解した上で、持ち込まれた企画も申し分ない。 やはり自分の案はいらなかったなと思いつつ、コーヒーをひと口飲んだときだった。 .
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