第1章

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「昔の話よ。もう思い出したくないの」 こんな地味な私がどんな風に化粧品のCMに出ていたのか、興味が湧くのはわからなくもない。 なにかの間違いでもなければ化粧品のCMに出ていたとは誰も思わないだろう。 「ご覧になったんですか?」 もし見ていたら、今の私と金曜日に会った私が同一人物だと気が付いてもおかしくない。 見ていないと言ってくれと、祈る思いで質問した。 「御社の過去のCMを出来る限り集めて研究したんですが、残念ながら白石さんが出ていたCMは見つけられませんでした」 その言葉に思わずホッと息を吐いた。 「うわ~、見たかったな」 「見なくてよろしい。あの頃のデータは全部処分してもらったの。社内にはポスター1枚ないはずよ」 .
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