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死神
……また、1人落としましたよ。
……ソウカ、ヨクヤッタ。
俺は、目の前で泣きじゃくる、事故にあったという少年を見ていた。
彼は、普通に手術を受けて治療に励めば、治らないほどの怪我ではなかった。その事実を、俺は知っていた。
…なんでかって?この羊の夢は俺の夢だからさ。
そう、ちょうど2年前。
俺が落ちてきた夢の世界に、俺の今の主人にあたる死神はいた。黒い服を着て、立っていた。
――マダ、イキテイタイカ?
そう、聞いてきたんだったな。
答えは、YESだった。
俺が死んだ理由が、望まない死だったからだ。
死神は、俺が現実世界を行き来できるようにしてくれた。ただし、条件付きで。
現実世界で、この夢に落ちてきそうな人間を200人殺せ。この夢に落ちてきた魂は、俺が喰らう。
そう、つまりこの死神は、自分は働きたくないが魂は食べたい、という思考の持ち主だった。
俺はその条件を飲んだ。
簡単なものだった。羊の夢を見ている奴を、死神は俺に教えてくれる。そいつの元に行って、そいつを何らかの理由をつけて殺せばいい。
――今日で109人目か。
……なぁ、死神?俺が200人分の魂を渡せば、もう一度完全な体として現実世界に帰してくれるんだよな?
――アア、モチロンダ。ワタシガヤクソクヲヤブルトオモッタノカ?
…いいや。
現実世界に戻ってやる。
たとえ他者をどれだけ地獄に落としてもな。
内心でほくそ笑みながら、俺が殺した少年をもう一度見つめた。そしてこう言ってやった。
「…残念だったな。羊なんか、数えなければな」
―END―
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