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たった今天国だと思ったところが、地獄だと言われても…。
受け入れられるわけがなかった。
けれど、相手の羊の真剣な眼差しに冗談じゃないのが伝わってきた。
まぁ、例え話のことだろう?
「具体的にはどういう所が地獄なんだ?」
僕は素直に相手の例え話に乗ることにした。
「…詳しくは、話せねー。ただ、ここにいる羊は全員夢を見ているのだと言うことは言える。お前が丁度109人目だろうか。眠れずにいるやつらが、たまに羊を数えるだろう?なぜだかわからないが、ここにいる奴らは全員、羊を数えているんだ。」
109人目……。あぁ!確か僕は…
「僕、109頭目の羊を数え終えたときに眠った気がする!」
「そう。他のみんなもそう言うんだ。」
なるほど、なんだか奇妙な話だな。
まぁこれは夢だ。本当なわけ無いだろう。
「さらに、ここに一度来てしまうと、この夢から覚めることが出来ないんだ」
―――え?
「現に俺なんか、かれこれ2年ほど羊のままだ」
「そ、そんな!嘘だろ?
…ま、まぁ気にするな、これは夢だ。何かの悪い夢なんだ」
「…最初は、俺もそう思っていたんだけどな。
まぁせいぜいそう思っていることだな。」
…それから数日―――。
あいつの言った通り、僕はこの世界から抜け出せないでいたのだった。
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