羊の夢

2/2
前へ
/6ページ
次へ
たった今天国だと思ったところが、地獄だと言われても…。 受け入れられるわけがなかった。 けれど、相手の羊の真剣な眼差しに冗談じゃないのが伝わってきた。 まぁ、例え話のことだろう? 「具体的にはどういう所が地獄なんだ?」 僕は素直に相手の例え話に乗ることにした。 「…詳しくは、話せねー。ただ、ここにいる羊は全員夢を見ているのだと言うことは言える。お前が丁度109人目だろうか。眠れずにいるやつらが、たまに羊を数えるだろう?なぜだかわからないが、ここにいる奴らは全員、羊を数えているんだ。」 109人目……。あぁ!確か僕は… 「僕、109頭目の羊を数え終えたときに眠った気がする!」 「そう。他のみんなもそう言うんだ。」 なるほど、なんだか奇妙な話だな。 まぁこれは夢だ。本当なわけ無いだろう。 「さらに、ここに一度来てしまうと、この夢から覚めることが出来ないんだ」 ―――え? 「現に俺なんか、かれこれ2年ほど羊のままだ」 「そ、そんな!嘘だろ? …ま、まぁ気にするな、これは夢だ。何かの悪い夢なんだ」 「…最初は、俺もそう思っていたんだけどな。 まぁせいぜいそう思っていることだな。」 …それから数日―――。 あいつの言った通り、僕はこの世界から抜け出せないでいたのだった。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加