第二章 出会い

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第二章 出会い

「栞ちゃん。そろそろ塾、考えてみない?」 「んえっ?」  その日、学校が終わってから制服のまま自宅のリビングのソファーの肘掛に足を乗っけて、ポッキーを齧りながらスマホのニュースフィードをスクロールして眺めていた栞は不意打ちを食らって間抜けな声を出した。 「塾。来年はもう受験でしょう?1年生の頃に通っていた塾だって直ぐに辞めちゃったし、お母さん調べてみてとっても評判の良い所があるってわかったの。そこならきっと栞ちゃんにも合うと思うのね。とりあえずでいいから一回行ってみない?」  そう掛けられた声の方向に目を遣ると、ダイニングテーブルの上に何枚かのチラシが無造作に置かれているのが目に入った。 「どれどれ……」 私はその中から一枚をつまみあげてしげしげと眺めてみる。カラフルな文字の中に、その塾のロゴはあった。カワキタゼミ…… 「そこね。理系にも強いらしくって、とっても評判の良いクラスがあるのよ。人気らしいから入れるか分からないけれど、お母さんもついて行くから一回説明だけでも聞いてみましょう? ねっ?」 「うん。あっ。でも私文型……」 自分でもどこかで教えて貰わなくちゃまずいとと思っていたので素直に納得する部分はあるものの、口ごもる栞。そんな栞にお母さんは、畳み掛けるように言った。 「いいの、いいの。栞ちゃんが目指している学校の受験には数学だって必要でしょう? お勧めなのは、数学の中でも一番簡単な方のコースだから。それよりも問題は空いているかどうかね。」 「そう……なんだ。はーい。」 こうして、栞はその塾、カワキタゼミの扉を叩く事になったのだった。
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