(1) 不機嫌のワケ

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 先輩の照れっぷりにこっちまで照れてきて、この話題を終わらせようと思った。  でも、先輩は私が謝ったことに気を遣ったのか、 「ひ……平井は褒めてくれたんだから、別に謝らなくていい……」  などと言ってくれるものだから、私もたまらなくなって、体温がどんどん上がっていく。  今、丁度利用者がいないからいいようなものの、受付に座っている二人が真っ赤になっているこの状況は、どう見ても恥ずかしすぎる。  私は気を落ち着かせようと、先輩から勧めてもらった密室シリーズの続きを読み始めることにした。  すると、先輩はそれを見て私に尋ねてくる。 「犯人、わかった?」 「わかる訳ないじゃないですか! まだ半分くらいしか読んでないのに」 「半分まできてれば、かなり伏線も張られてるし、大体予測はつく」 「……先輩のその予測、当たったんですか?」 「当然」  私は推理ものは好きだけれど、犯人当てはできないのだ。
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