序章・青ざめた子供

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序章・青ざめた子供

 西の大魔女の「愛弟子」として契約したのがどれほど前だったのか、思い出すのも苦労する。  それほど長い間、わたしは彼の愛弟子として働いてきた。  彼は――西の大魔女ではあるが、彼である――トラメ石の力を受けた、強靭な魔力を持つ魔女であり、その力を頼って、毎日のように「依頼」が来る。  人々はまさか自分が「依頼」を飛ばしているとは思わない。だが、現に「依頼」は飛んでくる。「依頼」は毎秒のように発生し、見えない姿を躍らせて、魔女の魔力に引き寄せられるのだ。  強烈な思いを乗せた「依頼」は、無数に飛び交っており、わたしが選び取るのはその中のほんのわずか。  その一握りの中から、更に選別して、選び抜いた「依頼」を魔女に届けるのがわたしの役目だ。  「お前に任せる」  と、わたしの師匠は言った。  簡潔な言葉だが、その重みがどんなものか、誰にも想像はできないだろう。  わたしの選んだ「依頼」を、師は受け、そして、人の運命が狂う。  ……狂うのだ。  魔力による解決などは、ない。  だから、「依頼」を受け、契約が成立した瞬間、依頼主は自分の一部を失うのである。     
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