フンババ伝説殺人事件

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【1】  殺人事件が起きる度に、厭な空気を吸わされる。  遺体から放たれる死の臭い。鉄のような血の臭いに死後硬直の直後に筋肉が弛緩してあらゆる排せつ物が出た臭い、犯人が醸し出す殺気や狂気と言った負の感情が混じりあった臭いは衣類に付くとなかなかとれない。 食欲すらわかず、ろくに眠ることも出来ない。遺体と一緒に過ごすと考えただけで吐き気がするほどだった。 だれも遺体に触れたがらない気持ちは分からないでもないが、何の処理もせず放置するのは遺体遺棄を容認する行為に等しい。その上、調査や推理は自分のような私立探偵にまるなげと来ているのは実に無責任だ。 そんな奴らが、探偵の行くところで必ず事件が起きると死神扱いしたり、名探偵みなを集めてさてと言いなどと言う造語を作る「8時ダヨ、全員集合!」か。笑わせる。 被害者たちも被害者たちで殺害されても仕方ないことをしているし、被害者遺族は犯人を恨み、犯人は探偵を恨み、出所したら報復に出ることを考えているが、メディアはあたかも有名人のように一ヶ月に渡り、ニュースやワイドショーで取り上げるばかりか、後から知れた真実をチマチマと小出しにする始末...... 結局、事件を解いても誰もしあわせにはならない。 都会に居続ければ、何時か鬱になりそうだ、ひとのいない場所に出かけて気分転換しようと事務所を飛び出した。  それが、私立探偵・白砂雪夜が日本から離れたアフリカに行く理由だ。
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