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それは未来の自分を映すでも、喋り出すでもなくごく普通の鏡に思われたが、何故だかあまねは鏡の前から離れることができず、何かに引き寄せられるかのようにそっと手を伸ばす。
鏡の中の自分と指先が触れようとした時だった。
「えっ...!」
自分が映っていたはずのその鏡に突如映し出されたのは、あまねにとてもよく似た女性の姿だった。
驚いて伸ばしかけた手を引こうとするが、まるで金縛りにあったかのように、体が言うことを聞かない。
その女性は、深い悲しみに染まった瞳をあまねへと向ける。
「助けて...」
声があまねの頭の中で直接響く。
指先が触れた瞬間ーー。
「......!」
まるで電流が体を駆け巡るような凄まじい衝撃を受けて、あまねの意識はそこで途絶えた。
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