otherside

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「初めて見たときから先輩のこと素敵だなって思ってたんですけど、その、この前先輩がここでしゃがみこんでるのが見えて、」 後輩か。全く知らないしもちろん話したこともない。というか早く下駄箱行きたい。 「それで、何してたのかなって思ってたんですけど、もしかしてその、間違ってたら恥ずかしいんですけど、」 間違っててもいいから早く終わらせてくれ。 「サナギ…先輩がいなくなった後に、見つけて。もしかして、それ見てたのかなって。それで私…!」 多分当たり。よく覚えてないけど。 早く戻りたい。 「それで私、もっと先輩のこと知りたいと思って…!」 そうなんだ、俺は別に知りたくない。 とは言わない。 「そっか、ありがと」 一応笑顔で返す。彼の前以外で使う表情筋がもったいない。 笑うのってこんな重労働だったかな。 そう、たまにいるんだ。こうやって俺の世界に歩み寄ろうとする人間が。 まぁこいつらが本当に興味があるのは俺じゃないだろうな、と思う。 そりゃ見た目だって俺の一部なんだからそうとは言い切れないかもしんないけど、それでも腹の底に見える下心みたいなものが、もう見飽きたそれが毎回俺をうんざりさせる。 でもいいんだ。おれはもう見つけたから。 どうでもいいんだ。 彼以外は、どうでもいい。 真っ直ぐに俺の世界に興味を示してくれた、唯一無二の存在。 くだらないことを分け合って、おもしろいものもきれいなものも教え合って、たまにいたずらしてやったりなんかして。 そうやって色んな表情を見ていたいんだ。 俺の世界の真ん中。 その場所は、彼だけのものだから。 替わりなんていらないし、替わりになるものなんて存在しないんだ。 …まぁ例え彼が俺の世界に興味がなくなったとしても、もう離してやらないけれど。 さっさと手紙を受け取って足早に彼の元へ向かう。 あぁ、早く会いに行こう。 おれの世界を全部あげるから、きみの世界を全部ちょうだい。 end.
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