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「あー、なるほどなぁ」
少年はひとり納得したように頷く。
「これお前が見つけたの?すげーなぁ。俺初めて見たかも。」
彼の視線の先には、サナギから出てきたばかりのアゲハチョウ。
俺がさっき見つけたものだ。
「なーんだ、これ見てたのかよ。こんなすげーもんあるなら教えてくれよな。こんなところで一人うずくまってるからどっかしんどいのかと思うじゃん」
良かった、保健室の先生呼びに行こうかと思ってたんだよなーなんて言いながら俺の隣に腰掛け、少年は子どもらしい屈託のない笑顔を俺に向けて言った。
「な、また何か見つけたら教えてくんない?」
「…変なやつだな」
率直な感想だった。
だけど決して悪い意味じゃない。
俺にとっては初めてのタイプだったから。
「失礼だな!お前に言われたくねーよ」
少年は、今度はムスッと頬を膨らませて怒った。
コロコロと表情が変わる彼が面白くて、俺がついふふっと笑うと、今度は驚いたような顔をして見つめてきた。
大きな真ん丸い瞳が可愛らしい。
「びっくりしたー。そんな風に笑うんだな」
良いこと知っちゃったな、なんて彼は無邪気に喜んでいるけれど。
俺のほうが良いもの見つけたよ。
世界で一番おもしろくて、美しいもの。
これ以上の発見は、きっとこの先もう無いだろう。
でも、誰にも教えてやんない。
俺以外知らなくていい、俺だけのものだ。
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