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「…何してんの」
「んー?見て分かんない?タイルの白いとこだけ踏んでるんだよ」
いつもの帰り道。
何だか変な動きをして歩く隣の幼馴染みを不審に思い足元を見ると、彼はランダムに色分けされた路上のタイルを器用にも白いところだけ踏んで歩いていた。
「いやそれは分かるけどさ。何でそんなことしてんのって意味だよ」
「んー、何となく」
足が長い幼馴染みは遠いところのタイルも何のその。俺なら多分届かないんじゃないかな。いや、ジャンプすれば何とかいけるか?くそ、羨ましい。
一応周りに人がいないのを確認して、迷惑にならないようにしているのが微笑ましいというか、何というか。
「小学生じゃあるまいし…」
横断歩道の白いとこだけ渡る、みたいな。
整った顔をくしゃりと歪め、ふふっと無邪気に笑う幼馴染み。
俺がムスッとした顔で睨みつけても本当に楽しそうに笑うもんだから、なんだか気が抜けてしまう。
昔っからこいつは思ったことをそのまま実行する、ちょっと変なやつだった。
「あ、白いとこ無くなっちゃった」
「ばーか」
毎日毎日飽きもせず、こうしてくだらないやり取りをして家路につく。
太陽が西へ向かう。
世界がちょっとだけオレンジ色に染まり始めていた。
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