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医者の説明はいまいち的を得なかった。本人もきちんと理解しているかどうか、怪しいものだ。テクノロジーは正体不明のブラックボックスを、あらゆる分野に産み落としていく。その兆候は俺の時代にもあった。今ではもっとひどいことになっているのだろう。まあ、しょうがない。
CRISPR/Cas9を利用して遺伝子そのものを操作することで、神経伝達を正常化した。さらには筋組織に一定量を保ち続けさせるために、コールドスリープの間、微弱電流を流し続けていたらしい。
人工的に保たれた筋肉を自分のものにするまでには、少々時間がかかった。今でも歩くのは若干困難が伴うが、贅沢は言っていられない。
何はともあれ俺は生きている。
利き腕に問題はない。
十分だ。
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