[luck]

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 今日も夢の中で煙草を吸った。禁煙して四日目。言わば禁煙のプロである俺はある意味敗北しているのかもしれない。吸いたいという欲求に。喫煙してニコチンを体内に取り入れたいという脳が発する欲求に。それは見事な再現であった。遥か昔の懐かしいマルボロの味、甘く濃い煙の味が夢の中の俺の肺を満たし、目覚めた俺は自分の夢の出来映えに感動した。煙草が唇にあたる感触、鼻から抜けていく煙の流れ。リアルだったのだすべてが。さて今回なぜ俺が何度目かの禁煙にトライしているのかと言うと、一週間前に夢の中の枕元でうちの猫メロンから禁煙を促されたからだ。臭いからやめてくれ、とはっきり日本語で告げられ俺はびっくりした。まるで渋い声の声優さんのような明晰な声でそう言われたのだ。もちろんというか彼が煙草の煙を嫌っているのは行動から知ってるさ。でも無言ですたこらさっさと姿を消すだけなんで俺としても気に留めたりはしなかったわけだ。  
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