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朝起きると俺は驚いた。しかしそんなそぶりは見せずいつもと同じように振る舞う。喧嘩して実家に戻っていた妻が帰宅していたのだ。妻も煙草を嫌う質なのですぐに訊いてくる。また禁煙ブーム?と。俺は説明した。メロンが夢に出てきてやめてくれと言ったのだと。「健康によくないって?」「や、臭いからやめてくれと」「ばっはは」妻は笑った。俺は内心ほっとしていた。まあ喧嘩はいつものことだし今回だって一過性の家出なはずだ。だよね?
妻の陽子が買い物に出掛けたので家にメロンと二人きりになる。アメリカンショートヘアーの彼は人間とは一定の距離を保つのがポリシーで今もそうだった。俺は居間のテーブルで新聞のチラシを読んでいて、ふと背中に視線を感じた。振り向くとソファーの座面に寄りかかり、脚を広げて床に座ったメロンが俺をじっと見つめていた。こんなだらしのない姿勢で座るメロンは初めて見た。どうした? 俺は何となく気になって彼に近寄り、あぐらをかいて腰を下ろし声をかけた。
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