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「どうしたんだ? そういや、こないだ夢に出てきたのお前だよな?」
体は微動だにせず彼は視線だけ俺に送っている。何となくニャーと言いそうな雰囲気。しかし──
「そうだ」彼はそう言った。
「!」俺は周りを見渡す。誰もいない、俺だけ。居間に俺だけ。
メロンがつづける。
「俺の命はそんなに長くないんで、猫の神様に頼んだのよ。せめて最後の何週間かでいい、啓介が煙草吸うの臭いからやめさせてくれませんかって。二階で吸ってても一階まで臭うんだよ。で、まずは人間語を喋れるようにして貰って…喋れないと伝えられないだろ?…取っ掛かりとして夢の中で忠告したのよ」「…病気?」「寿命だよ。こてんと死ぬから心配するな」
暫く俺は黙り込み事態を受け入れることに集中した。それからこう問うた。
「いつまで話せるんだ?」
「あと一時間くらいだと思う」
「じゃあ今のうちに言いたいことがあったら言ってくれ」
「ん?名前が嫌だったな。もっとこうさあ…猫っぽい名前がよかったな。次の猫にはオーソドックスな名前をつけてやってくれよ」
「…そうしよう。わるかったな」
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