[luck]

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 彼は忘れていると思うが最初はメロンパンだった。略してメロンである。 「少しばかり大事な話をしておくよ。陽子さんはギフトだ。そのことを忘れるな。お前のようなくず野郎が結婚できたのは運でしかない」天からの贈り物という意味だろう。「そうだと思ってた」「運ってのはつまり俺だ。俺が招いた運なのよ。…だから俺が居なくなったらたちまち神通力みたいなもんはなくなる…。そこんとこよく考えろ。よく考えて生きていけ」  それから俺達は時間が来るまで語り合った。実際のところ俺の頭の中はカオスになっていたので大した中身じゃなかった。一時住んでいた両親のこと。よく遊びに来ていた友人逹のこと。彼の本音としては家猫という立場は仕方ないにせよ外の世界をもっと知りたかったということ…これについては野良猫という存在について俺は説明する必要があった。野良は自由な一方で雨のように死んでいくと。それは知ってる、と彼は言っていたが、ということは猫界には念で通じ合うネットワークのようなものがあるのだろうか? あるのだろうきっと。  
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