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「閃光加工の爆裂弾、よくもまぁ色々と思い付くものですね」
背を向けていたことで、シュラは被害を免れている。
無論、被害を被るような状況であれば、ベルニカは他の手段をとったのであろうが。
「何言ってんだよ。お前が思い付いてねぇハズがねぇだろ、使わないだけでサ」
シュラは卑劣な相手であっても、自らまで堕ちようとはしない。
あくまでも彼は騎士であり、騎士であるからには騎士の戦いをする必要がある。
「あとの半分はお前の手柄首だ。この騒ぎだ、早くしねぇと仲間が全部とっちまうぜ?」
「別に、私は手柄首なんて欲しくありませんよ」
すっかり口調の戻ったシュラは、店を飛び出してから初めて、ゴミ処理部隊の影達に言葉をぶつける。
「闇討上等、罠でも人海戦術でも、勝ちの目があるならば全て試して構いません。私はその全てを、真正面から打ち破って見せましょう!」
敵の視力が戻るのを、シュラは待つ。
誇りのためとはいえ、傍から見れば愚策であろう。
だが、己を貫き通すその様は、魔王として君臨する父と変わらぬ、意志の強さを示している。
「覚悟しろ、愚かな王子よ!」
いつから潜んでいたのだろう。
舗装された街道を突き破り、シュラの足元より何者かの爪が飛び出す。
その場から飛び退くのが刹那の差で遅れていれば、その命は無かったであろう。
地中から現れた者の姿は、四本の細腕の先に一つずつの鋭利な爪を持つ、昆虫のような頭部の異形の怪物であった。
「振動をご存知ですか?大袈裟な得物でこんな硬い道をガリガリと掘っていれば、狙いはバレバレですよ」
同じことをベルニカに仕掛けた者が居たのだろう、ベルニカはおもむろに剣を足元に突き刺す。
引き抜かれた剣は、紅く煌いていた。
「シュラ!別段、丈夫でもないぞ!」
「丈夫なわけ無いでしょう。精々、人間と同格か、僅かに勝るかといったところですか」
一撃で頭を貫いたため、丈夫も何もあったものではないことにベルニカは気付いていないが、彼女達の読みはほぼ的中と言えるだろう。
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