戦場駆ける、王の子供達

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「ベルニカ様ァッ!敵第一突撃部隊が移動を開始、我が部隊との接触まで残り、五分!」 重厚な鎧を纏った騎士が千八百、迫り来る。 対するは、各々不揃いな装備の戦士三百、そしてそれを率いる―― 「おう!俺が頭目ブッ叩くから、お前らは総崩れの雑兵をブチのめせ!」 胸部にサラシを巻き、腰から下には革製の簡素な鎧を纏った異様な風体の女戦士、総勢三百一名の猛者である。 「突撃予定時刻まで、三……二……一……!」 副長のカウントダウンが終焉へと近付き、女戦士、ベルニカはニヤリと笑う。 そして、腰の剣を抜いた。 「戦闘開始ッ!!」 戦場に響き渡る、副長の怒号。 それと同時に姿をくらます、疾風が如き女戦士。 敵味方を問わず、次にその姿を捉えたとき、突撃する部隊中央の騎士が数名、切り伏せられていた。 あまりにも驚異的な動きに、騎士達は狼狽する。 そして女戦士は、その切っ先に首を掲げ、敵部隊のど真ん中で名乗りを上げる。 「我こそは、サタンズラグナ王国王女兼、王国特殊遊撃部隊隊長ベルニカ=ティラヌス=デス!!貴君らが首、受け取りに参ったァッ!!」 掲げた剣を振り下ろすと同時に、王家の者のみが体得可能と言い伝えられる、『(オーラ)』の斬撃を放つ。 突き進むたびに巨大化する大地を切り裂く斬撃は、二百の騎士と騎士達の長を粉砕した後、後方に控えていたもう一つの敵部隊の中央を大きく抉り、ようやく消失した。 常人では到底成しえぬ異常な攻撃を目の当たりにしたこと、その攻撃で率いる者を失ったこと、眼前で名乗りを上げた女が笑みを浮かべていること、これだけの要素が揃えば、百戦錬磨の騎士の全てを恐れさせるには十分足り得るだろう。 事実、騎士の殆どは剣も、鎧までも投げ捨てて、我先にと逃げ出した。 「なんだ、一発殴られただけで逃げ出しやがって。ダッセェの!」 興冷めした素振りを見せるベルニカに、卑怯にも一人の騎士が背後から斬りかかる。 死角からの攻撃のはずだった、そのはずなのに彼女の剣がそれを遮っていた。 「逃げた奴と言い、テメェと言い、本当に騎士か?ウチの弟の爪の垢でも煎じて飲むか?」 剣を弾き返し、がら空きの胴体を蹴りぬく。 その衝撃は鎧も、臓腑も、当然のように骨すらも崩壊させ、一撃で命を奪い去る。 吹き飛んだ骸の悲惨さに、逃げ出す騎士は更に増えた。
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