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「まぁ、予定通りといえば予定通りか。あとは仲間が料理して――」
手応えの無さに半ば呆れ返っていたベルニカだが、突如一点を睨みつける。
その一点より、怯えた騎士を大きなメイスで打ち払いながら現れたのは、巨漢の騎士。
コイツは違う、ベルニカはそれを感じ取ったのだ。
「合間見えるとは光栄ですなァ、ベルニカ殿。私はアゴット、騎士団の副長を勤めている」
「俺のジャブ一発で沈んだ、軟弱なボスキャラよりもガッツがありそうじゃねぇか」
「団長は政治の手腕で団長になったのだ。喧嘩では、この雑兵らにも勝てはせん」
「仲間を平気で殴り飛ばすようなゴリラ野郎よりは、長としての器はあったかもな」
ベルニカは剣を構え、表情に闘志を宿らせる。
アゴットもまた、メイスを振りかぶる。
「貴方と同じこと、私も出来るんです、よォォォッ!!」
勢いよく地面に叩きつけられたメイスから発せられる衝撃波は、大地を抉りながらベルニカへと迫る。
魔力を帯びた衝撃波はやがて、岩の塊を隆起させる魔術へと変貌する。
「ケッ!何が同じだ、威力はしょっぺェし、俺は魔力なんか使わねェンだよ!」
ベルニカは先程よりも威力を落とし、アゴットの魔術を相殺する。
その際に発生した土煙の中から巨体と似つかぬ俊足でアゴットが迫り、ベルニカの側面より腹部を狙ってメイスを薙ぎ払った。
渾身の力で繰り出された攻撃だったがしかし、ベルニカは片手で持つ剣でそれを防ぎ切ってしまった。
「……まぁ、一兵卒としては及第点か。お前以外は全員落第生だ、誇って自慢してもいいぜ」
「ぐ……おのれェ……!」
涼しい顔で防がれた挙句、一兵卒呼ばわりされては、流石のアゴットも沸騰するというもの。
顔を真っ赤にしたアゴットは、粗雑な連撃を繰り返す。
その一つ一つを、ベルニカは相変わらず涼しい顔で、時には空いた右手で目や鼻、耳までも弄りながら防いでいく。
「ナメるのも大概にしろォッ!貴様も騎士ならば、真っ向から応えぬかァッ!!」
アゴットの怒りはもっともである。
挑発された挙句、明らかに手を抜かれているのだ。
「言い忘れてたけどな――」
ベルニカは振り下ろされたメイスを受け流し、地面に叩きつけて動きを封じ込める。
「俺は騎士だなんて言ってねェよ、バーカ」
開いていたはずの右手には、リボルバー式の大型拳銃が握られていた。
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