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次の瞬間、アゴットの体が爆発四散する。
首や四肢を除いて原形を失い、飛び散ったアゴットに染まった周囲の騎士は半狂乱となる。
「俺は、遊撃隊だ。勝つためには何でもやる部隊であって、正々堂々真っ向から斬り合うなんてしねェんだよ。どうしても付き合って欲しけりゃ、ウチの弟にでも頼むんだな」
彼らの中で最も戦いに秀でた者が、ロクに相手にもされずに爆散して死んだ。
この時点で、生き残った騎士の中で戦意を持つ者はいなくなった。
常識の範疇を超えた攻撃で抉られた後続部隊も、逃げた騎士によって情報を伝えられた時点で僅かに残っていた戦意を完全に喪失、全部隊が撤退を始めた。
「ベルニカ様、俺達来た意味あるんすか?」
「うーん……まさかこんなに薄っぺらい相手とは」
「俺達、日当とかちゃんと出ますよね?何にもしてないけど」
「とーちゃんには出せって言っとく……」
ベルニカ率いる部隊は、とても無傷で戦いに勝ったとは思えないほど静かに帰投した。
ベルニカと同じく、血気盛んで暴れたがりな兵士達は結局何もしないまま帰るハメになったのだ。
せっかくの楽しみが目前にあったというのにお預けを食わされた気分と言えば、戦に携わらないものにも思い描ける悲壮であろう。
日当が無くなる代わりにもう一暴れできると聞けば、彼らはベルニカも含めて諸手を挙げて喜ぶのだろう。
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