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「シュラ様、ベルニカ様が帰投されたそうです」
「姉上……きっとまた無茶苦茶な事をしたのでしょう」
報告にため息をつく、一人の涼やかなる騎士、シュラ。
その周りには、七百余名の騎士がいる。
「敵の騎士隊、前進を開始しました!」
「こちらも前進します!私に続いて下さい!」
若き騎士は先頭を征く。
それに従う騎士達は遅れず、隊列も乱すことなく追従する。
「矢が来ます!総員、防御体勢へ!」
敵の騎士達の中に弓兵が紛れ込んでいたのだろう、大量の矢が降り注ぐ。
それと同時に、敵の騎士は走り出す。
不意の弓矢による先制攻撃から始まり、騎士によって一方的に畳み掛ける、彼らの頭の中ではそのような図式だったのだろう。
ただし、予想外だったのは――
「我々を止めたければ、倍の騎士と倍の弓兵、可能であれば戦車も持ってくることですね!」
――飛んでくる矢を叩き落とすことも、手で掴むことすらも容易にこなす集団であったことだ。
雨の如く降り注ぐ矢であろうとも、彼の騎士達に通用することなど万に一つも無い。
「総員、攻撃開始!このまま正面から突破します!」
弓兵は後退し、騎士達の攻防が始まる。
しかし、戦いは一方的なものだ。
シュラの率いる騎士の膂力は凄まじく、相手を鎧ごと両断することも珍しい光景ではない。
相手方の騎士も戦いに慣れた猛者なれど、シュラの率いる騎士の前では赤子に等しい扱いだ。
勝っていたはずの数も、ほんの十数分で逆転され、生き残った騎士達は逃げ出す間も無く捕縛された。
仲間の騎士を巻き込むことすら構わず弓兵達は攻撃するも、やはり何の意味も無く終わり、武器を捨てた者以外は切り伏せられた。
「貴公の名はなんと言うのだ?死ぬ前に聞かせてくれ」
捕らえられた敵将は覚悟を決めた様子だ。
他の騎士は見苦しく足掻いているが、無力化された騎士を殺すような蛮行は誰一人としてとらない。
「我が名は、シュラ=オネスティ=デス。サタンズラグナ王国王子であり、騎士隊の隊長です。あなた方の身の安全は保障します。捕虜に手をかけるような真似はしませんよ、あなた方とは違って」
シュラは侮蔑の眼差しを向け、背を向ける。
彼らもまた、不利な状況をほぼ無傷で打破することに成功した、類稀な強者であった。
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