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「おう、お帰り!そっちはどうだ?強かったか?」
騎士を引き連れて街道を征くシュラの行く手に、ベルニカが現れた。
上着を羽織り、薄手の服を着てこそいるが、相変わらず露出の多い服装だ。
「姉上……もう少しちゃんとした格好をしてくださいよ。誰があなたを王族だと思うのですか」
シュラは呆れ返っている。
同じことを言うのは何度目なのだろうか、後ろの騎士達にも見慣れたやり取りだ。
「固いこと言うなよおとーと君。騎士のみんなもお疲れさん!案の定、一人も欠けてねぇな!」
ベルニカは笑顔で労う。
シュラは困り果てているが、騎士達は素直に喜んでいる。
「……私は姉上と話がありますので、先に失礼します。街中ですが、一応気を付けて」
騎士達は二人に一礼し、そのまま先へと進み始める。
ベルニカは姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り続けていた。
「……で、なんか用でもあんのかよ、ねーちゃん」
先ほどまでの姿が想像できないほど、シュラの口調が砕けていた。
普段は固い口調なのだが、古くから知る者や家族のみの場合はこのような口調に戻るのだ。
「双子の弟を飲みに誘う、今日の仕事はそれで終わりだ!」
「……俺の仕事に、双子の姉の誘いを受けるなんて項目はねぇよ」
「でも行くだろ?」
「愚問だぜ、ねーちゃん」
二人は仲良さげに笑い、目的の店まで歩いていく。
街にある軍の拠点では、今頃祝勝会が開かれている頃だろうが、この姉弟が揃った場合にこうなることが多いのは、すでに兵達にも周知されている。
だから誰も異を唱えない。
「パーティーを蹴ってまで、サシで飲みたいのか?」
「だってそれじゃあ、お前が素になれねぇじゃん。どうせ飲るんだから、本気で楽しくしてぇじゃねぇか!」
「……ねーちゃんはもう少し素を隠した方がいいと思うけどな」
二人が好むのは、如何にも王族や貴族が好むような高貴な店ではない。
一般市民と利用するのと同じ店を、二人は好む。
何故かと問うと、二人は口を揃える。
高貴な店は、堅苦しくて味が分からない、と。
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