戦場駆ける、王の子供達

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更に時は進み、辺りは暗闇に包まれる。 店内の賑やかさはピークに達しているだろう。 ベルニカもシュラも、加減は上手い。 二人とも、酒を頼むのは途中から止まり、ジュース類に変わっている。 「どうする、ねーちゃん。そろそろ帰るか?」 「んだなぁ、あんまり遅いと副長が――」 突如、異変が起きる。 店内で悲鳴が上がり、それは連鎖する。 酔っぱらいの喧嘩程度ではない何かが、そこで起きていた。 「我らはオルクラド教国ゴミ処理部隊、我が国の英霊達の報復に参った」 黒装束で顔まで隠した影と形容できる者達が、店内の客や店員を手にかけ、血祭りにあげていた。 オルクラド教国、それは二人が先ほど打ち破った軍を持つ国の名だ。 「殺せ。我が国の敵は不要なり。躊躇なく殺――」 指揮官と思わしき、一際長身の男は、一刀の下に両断される。 続いてその両脇にいた者も、ほぼ同時に首を落とされた。 「居たぞ!ベルニカだ!殺せ、どこかにシュラもいるはずだ!殺せ!」 「なんだ、男ばっかじゃねぇんだな」 殺せ殺せと喚く女の喉に、ベルニカは容赦なく剣を突き刺した。 そしてその亡骸を剣ごと振り回し、自らの命を狙う者に投げつける。 「シュラ!ご指名貰ってんだ、機嫌良く出てこいよ!俺達に殺されたいってよ!」 「姉上ほど、人斬り願望はありませんよ。でも、これを見過ごすのは騎士の恥!覚悟ッ!!」 剣を抜いたシュラが部屋から飛び出し、迫る敵を斬り伏せる。 彼らの短剣による攻撃は素早く、常人とは比較にならぬ強さを感じさせる。 平均的な強さの兵士が相手ならば、十倍の人数差があっても圧勝しうるだろう。 しかし、それを超える猛者を率いる二人に、この程度は所詮雑兵である。 店内にいたゴミ処理部隊を名乗る集団は、迎撃開始から二分と持たずに全滅した。
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